米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官がキーフを訪問した後「ロシアを無力化する」またはそうしたいと言ったということです。英語でニュートラライズですが、この単語には強い意味があって場合によっては軍事的に制圧するという意味になる場合もあります。無力化するも強烈な言葉で、何も出来ない、ウクライナに害を与えることが出来ない、戦争に勝てないようにすることを意味します。ロシアに今ある力、侵攻する力を奪ってしまうということです。武器貸与法の狙いはそこにあるということです。
ロシアが通常兵器の戦いでニュートラライズされた場合、プーチン氏には停戦又は終戦交渉を受け入れるか、戦術核兵器などを使用して賭けに出るか、大きく言って二つ選択肢があります。ロシアの戦略では戦術核の使用はロシアの存亡の危機、通常戦争で負けそうになった時、経済制裁などを含めプーチン政権が窮地に追い込まれた時などが想定されます。(比較的に小型な戦術核と戦略核、つまり大陸間ミサイルや長距離爆撃機、原子力潜水艦搭載の大型核の意味合いははっきりと区別されます。戦術核は戦争目的遂行のために使用される核兵器で、戦略核は抑止力として保有されるものの使用すると自国も壊滅する可能性が高いため「使えない」核兵器です。安全保障のため、外交力のため、核による恫喝や独裁政権の維持のために保有されます。軍備としての意味はある訳です。例えが難しいですが社長さんがめったに使わない高級車を好きでもないのに保有するのはステータスシンボルとして商談をまとめたりするのに有効だったりする、そんな場合に似ています。信長の安土城は見せるための城でもあったなどの例もあります。城は使えますけど。)(つづく)
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【解説】ロシア、「戦術核」使用の可能性は
【3月28日 AFP】欧州の紛争で小型核兵器が使用されるのではないかとの懸念が浮上してきた。ロシアのウクライナ侵攻までは、想像だにされなかったことだ。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が「戦術核」の使用に踏み切る可能性について、Q&A形式でまとめた。
Q:懸念なぜ生じた
A:プーチン大統領はウクライナ侵攻開始から4日目の先月27日、核抑止力部隊を厳戒態勢に移行するよう命令した。西側の大半の専門家はこの動きについて、米国やその同盟国が既存の経済制裁や武器供与の枠を超えて対ウクライナ支援を拡大するのをけん制する狙いがあると分析している。
Q:ロシアの核兵力の規模、使用が懸念される核の種類は
A:スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ロシアが保有する核弾頭は6255発と、世界最多だ。
専門家はウクライナで想定されるリスクについて、地球全体に脅威を及ぼす大型の「戦略核兵器」の使用はないとみている。プーチン大統領が、欧州全体を脅かさずに局所的な破壊にとどめる小型弾頭を搭載した「戦術核兵器」の使用を検討する可能性はあるとみられている。
戦術核の威力は大小さまざまだ。起爆させるのが地上か空中かによっても破壊力は異なる。
Q:核兵器は最終手段ではないのか
A:核兵器は最終手段だ。しかし、ロシア側が戦闘で大敗を喫したり、国内の経済問題が深刻化したりしてプーチン氏の政治生命が脅かされ、窮地に追い込まれたと感じる可能性もある。ウクライナや西側諸国が危惧しているのはその点だ。
戦術核を使う場合、ウクライナ軍の抵抗を打ち砕き、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領に降伏を強いるのが狙いと考えられる。
ロシア問題に特化したシンクタンク「リドル(Riddle)」の専門家、パベル・ルージン(Pavel Luzin)氏は、第1段階としては、威嚇行動として、戦術核が海上ないし非居住地域で使用され得ると予想。「それでも敵が戦闘継続の意思を示せば、敵に対して直接使用される可能性がある」とし、都市が標的とされる恐れもあるとの見方を示した。
Q:ロシア大統領府の言い分は
A:ロシアのドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)大統領報道官は22日、米CNNのインタビューで、核兵器の使用に関する質問を受け、ロシアが万一、「存亡の危機」に直面した場合には、自国の規定に従って核兵器を使用することもあり得ると答えた。
Q:杞憂(きゆう)にすぎないのか
A:そうかもしれない。英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」の軍備管理の専門家ウィリアム・アルバーク(William Alberque)氏は、プーチン大統領が戦術核を使用する可能性を疑問視する。アルバーク氏は「核兵器使用が招く政治的コストはとてつもなく大きい。現在のわずかな支持さえ失うだろう。インドも手を引かざるを得ない。中国も同じだ」と分析する。
プーチン大統領が核の発射ボタンを押すには、セルゲイ・ショイグ(Sergei Shoigu)国防相、ワレリー・ゲラシモフ(Valery Gerasimov)参謀総長いずれかの承認が必要となる。
北大西洋条約機構(NATO)もしくは米国の直接の参戦につながる可能性もあり、それこそロシアが回避したいシナリオだと指摘する専門家もいる。(c)AFP/Adam PLOWRIGHT / Daphné BENOIT / Didier LAURAS
注 以下引用の赤字部分は戦術核と戦略核の違いを区別し忘れたために起こった誤報であるかも知れません。日本のテレビ番組における専門的研究者のどなたかの発言では戦術核の発射はプーチン氏の指令により現地指揮官が命令を出して行うもので通常のミサイルの弾頭を核弾頭に付け替えて発射されるということです。プーチン氏が押す発射ボタンは戦略核の使用に用いられるといいます。ただし筑波大学のロシア研究専門家中村逸郎教授は戦術核もプーチン氏の持つ核のボタンで発射されると花田紀凱氏との対談(以下)で語っています:「プーチン大統領が核の発射ボタンを押すには、セルゲイ・ショイグ(Sergei Shoigu)国防相、ワレリー・ゲラシモフ(Valery Gerasimov)参謀総長いずれかの承認が必要となる。」
【右向け右】第411回 - 中村逸郎・筑波大学教授 × 花田紀凱(プレビュー版)