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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画、観てきました!)

オススメします:ネタバレ注意

 

 映画のエンドロールが終わり、涙やなんかで曇った眼鏡(そういえばマスクもしていた)がだいぶよく見えるようになった時、まわりが明るくなって少しずつ観客席を立っていく若い女子学生や男女のカップルが減っていくのを私と妻と、唯一60代のカップルがずうっと見上げていた。

 福井市で観た映画の中で記憶に残る限り、こんなに人が入った映画はないし、特に10代20代の若者で会場が埋められる映画なんて初めてだ。ハリーポッターもジブリもこんなに人は入ってなかったはずだ。殊に、曲りなりにも戦争の映画で特攻ものを若い人がこんなに観に来るなんて奇跡ではないかとすら思った。現代から戦時中にタイムスリップするという映画は他にもあったと思うが(Winds Of God 1995年)女子高生がタイムスリップして特攻隊員と恋をするというのは初めてかも。

 人気の秘密は漫画化のヒットとその前のケータイ小説(原作)の大ヒットのようだ。若者にもわかりやすく、そして泣ける。映画もきれいに素直に恋愛ものとしても上手く出来ていると思った。史実に対して正確にリアルに、というこだわりではなく、リアルさもある程度担保しながら若者にも共感し心に「ささり」やすい素直な映画だと思った。配役も演技も良かった。

 そもそもこの映画が歴史そのままにリアルであるはずはないし、現代の女子高生が制服も何もそのまま戦時中にタイムスリップしたら当時の人が違和感を感じないはずもない。どこの誰なんだ、どこから来たんだと騒ぎになってもおかしくないのにスッと受け入れられるのは「夢」の要素があるからだろう。一番驚いたのは特攻隊員が仲間どうしで草野球をやるシーンで、これから米軍の軍艦に突っ込んでいく特攻隊員がアメリカの国技である野球を楽しんで許されたのかと思って調べると石丸進一という実在の特攻隊員は元プロ野球投手で筑波海軍航空隊にいた時に上官チームと予備学生チームの野球試合で上官チームのバットにかすりもさせない速球を投げて勝利したとウィキペディアに載っている。どうだろうか、さほど不自然な設定ではないのかも知れない。

 この映画、超大作でもアカデミー賞ノミネートでもないがサラッと「千と千尋」超えしてると思ったのは映画を見る前と後とのビフォーアフター、特に思春期・反抗期の女子中高生が素適な女子青年になっていきそうな予感がすることだった。60代でも泣けたしぬるま湯に浸かった生き方を反省もした。感受性の鋭い若者ならなおのことだろう。佐久間彰役の水上恒司(こうし)のきりっとしたカッコ良さは半端なく、男でも「これは惚れてまうやろ」と思った。